[The HUMAN] 第一章「贄の箱庭」/序〜1

空の境界』『月姫』『Fate/stay night』───作家・奈須きのこが生み出した3つの物語は、多くの人々を魅了してやまない。私もその一人だ。個性的なキャラクター、先の読めない展開、それを盛り上げる設定の数々、そして全作品通して描かれる「生きる」ことへのメッセージは、私の心を掴んで離さない。それはきっと、奈須の描いた「生きる」姿勢が、私の目指すそれに近いからなのだろう。

この二次創作小説『』はその3つの物語から数年経った、ほんの少しだけ未来のお話だ。

殺人を犯した少女と、彼女を許(はな)さないと誓った青年は結ばれ───
白い姫を愛する男は、全てを代償に、彼女の笑顔だけを求めて───
夢見る少年と恋する少女は、互いのために倫敦へ渡って───

かつての主人公たちがそのような道を辿り、やがて多くのファンが望んだように、それぞれが交わり合うこともあるかもしれない。

─────しかし、この物語では、彼らは一切登場しない
彼らには彼らの物語があるだろう。それを描くのは自由だ。だが、己の道を見いだしてしまった者たちのその後など、単なる事実の記録のようなもので、無粋な蛇足に他ならない。

描くべきものは他にある。1つの結末が決まっているのなら、そこから零れて続いてしまう物語もあるはずだ。この物語が焦点を当てるのは、そこだ。
『The HUMAN』の登場人物たちは、その零れ落ちた物語と関わり、また新たな物語を紡いでいく。

自称クリエイター:Kairiと、Web小説家:kaiによる共同制作、二次創作小説『The HUMAN』をお楽しみください。

「贄の箱庭」あらすじ

街を騒がせた連続猟奇殺人事件から5年。
かの“殺人鬼”がもたらした薬害から5年。
“殺人鬼”が消えたあの冬から、5年───。

7月の終わりに、麻薬の売人である蛍塚音子のアパートを1人の若い男が押し掛け、あるドラッグを強請る。5年前に流行ったそれは、当時を上回る凶悪さと流通スピードで、確実に広がりつつあった。

同時期、名門・分田(わけだ)大学では試験期間が終わりにさしかかっていた。
その日、政経学部1年の丹生恵(たんじょう めぐみ)も最後のテストを終え、友人と違ってバイトばかりな自分の夏休みを少しだけ憂いていた。そんな彼女の前に、1人の男が現れる。
彼女の物語は、ここから始まった。

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投稿者:

甲斐 日比野

ウェブ小説家。 二次創作小説「The HUMAN」文章演出担当。